大判例

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広島高等裁判所 昭和27年(う)253号 判決

所論に鑑み論旨指摘の起訴状を見るに、先ず第一に冒頭の罪名を表示した個所には住居侵人をも掲げ(一)乃至(三八)(但九は除く)の公訴事実の中にはいずれも「住居に侵入し」との記載はあるが、末尾の罪名、罰条を表示した個所には住居侵入については何の記載もない。これによつて見ると、検事は右公訴事実の全部(但九は除く)について住居侵入罪の公訴を提起したものかどうか、必ずしも明かではない。右のように冒頭に「住居侵入」の記載もあり又各公訴事実中にいずれも「住居に侵入し」との記載がある以上全部について当然起訴されたものと解することは必ずしも妥当ではない。罪名及び罰条は起訴状の末尾に記載されるのが慣例であるから、此処の記載によつてのみ罪名及び罰条を判断すべきであるともいえるのであるが、然し右の中三、一五、一八、二〇、二九、三三、三六、については住居侵入のみの訴因を掲げたものであり、(但三〇、三一、いずれか明らかでない)又昭和二十六年十二月十五日付起訴状の公訴事実との対照上からもこれらについては住居侵入罪について起訴するの意思を有していたのであるが、之に対する罪名、罰条の記載を遺脱したものと解せられないことはない。又かく解したとしても被告人の全く予期しない事実を認定され、実質的な不利益を受けるような虞れはないと認められるであろうが、右以外の公訴事実(但九を除く)については事情は異る、即ちこれらはいずれも強制猥褻罪との牽連関係に於て住居侵入の事実が記載されている。この場合に於ては結局重い強制猥褻罪の方で処断されることになるので右と同じく実質的な不利益を及ぼす虞れはないというものもあるかも知れないがしかし原判決がその実例を示しているように、重い方の強制猥褻罪が公訴を棄却され又は無罪とされたため住居侵入罪のみで処断された場合を考えれば実質的な不利益を蒙らないとはいえない。公訴事実に住居に侵入しと記載してあつてもこれに対する罪名及び罰条を記載していないときは住居に侵入しとあるのは単に情状として記載したに過ぎないと解すべきであるから起訴の有無を明かにしないで住居に侵入しとある一事によつて当然起訴してあるものとして審理判決することは所謂抜き打ち的な不利益を与えることとなるから審判の請求を受けない事実について審判をしたという非難を免れない。

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